未来のじぶんに、ちょっと先の気づきを
自分らしい働き方を見つけるためのコラム

近年「大人の発達障害」の症例が多く報告されるようになりました。自分では努力しているつもりでも、周囲とどうしてもうまくいかなかったり、仕事でミスを繰り返してしまったりすると「もしかすると大人の発達障害なのでは?」と思う方もいるでしょう。
この記事では、大人の発達障害のうち「ADHD」をクローズアップし、特性と、よくある困りごとの解決策や対処法を解説します。
大人のADHDとは
「大人のADHD」とは、大人になってから注意欠如・多動症があることに気づくケースを指します。
ADHD(注意欠如・多動症)とは、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つを特性とする発達障害の一種です。そして、ADHDをはじめとする発達障害は、生まれつきのものであり、大人になってから発症することはないと言われています。
しかしADHDの特性は、乳幼児期の一般的な特徴と似ている部分も多いため、幼少期に傾向を見過ごされたまま成長した方も珍しくありません。はたらき始めたり、大人になって人間関係が広がったりすることで、これまで気づかなかった特性や、周囲との違いが表面化し、うまく対処できなくなる方が多い傾向にあります。また、周囲からの指摘で違和感に気づく方や、うつ病などの二次障害で受診したことをきっかけに発達障害があると分かる方もいます。
もしかして発達障害!?大人のADHDチェックリスト
「ADHDかもしれない」と感じているなら、まずは自分でチェックしてみましょう。以下に、ADHDの特性をチェックリスト形式にまとめました。
【ADHDの不注意の特性】
- 気をつけているつもりでも、誤字・脱字や計算ミスといったケアレスミスが多い
- 忘れ物・なくし物が多い
- 決められたスケジュールや約束を忘れてしまうことが多々ある
- 集中力が長く続かず、すぐに気が散ってしまう
- マルチタスクが苦手
- 順序立てた作業が不得意
- 身の回りの整理整頓がうまくできない
- 先の見通しが甘くなりがち
【ADHDの多動性の特性】
- 一箇所にじっとしていられず、動き回ってしまう
- 行動に落ち着きがなく、常にソワソワした印象を与える
- その場の雰囲気にかかわらず、しゃべりすぎたり大きな声を出したりしてしまう
- 相手の話を遮って話し始めてしまうことがよくある
- 頭の中にさまざまな考えが取り止めもなく浮かび落ち着かない
- 順番を待てない
- 周囲にも自分と同じスピード感を求めてしまう
【ADHDの衝動性の特性】
- 頭の中で思ったことや感じたことをすぐ口に出してしまう
- 些細なことでもカッとなったりイライラしたりする
- 感情を抑えることが難しく人と衝突しがち
- 欲しいと思うと我慢できず衝動買いをよくする
なお、不注意は偏った形で表面化するケースもあり、興味のないことには集中できない反面、好きなこと・関心の強いことには過集中になることもあります。また、上記に加え、五感のいずれかが過剰に敏感な「感覚過敏」もADHDの特性の一つです。
ただし、ADHDの特性は、発達障害のない方にも見られることがあるため、本チェックリストはあくまでも目安です。特性により、日常生活や仕事、人間関係に支障をきたすほどの困りごとがある場合に、発達障害(ADHD)だと診断される可能性があります。
大人の発達障害は、本人の自覚がないケースも多いです。特性によるストレスや、失敗経験の積み重ねで、うつ病や適応障害、パニック障害などの二次障害を発症する方もいます。テスト結果にかかわらず、気になる症状があるときは精神科や心療内科を受診しましょう。
なお下記ページでは、ADHD簡易診断テストが受けられます。結果をそのまま印刷して病院に持って行けるので、お気軽にご活用ください。
大人のADHDの困りごとを改善する6つのポイント

ここでは、大人の発達障害がある、もしくはその傾向がある方の困りごとを改善するための6つのポイントを紹介します。
精神科・心療内科で検査する
自分がADHDかもしれないと思ったときは、速やかに精神科や心療内科を受診し、検査を受けましょう。特性があるからといって、ADHDとは限らないので、自己判断は厳禁です。診断の確定後は、特性に応じて薬物療法や認知行動療法といった治療を受けることで、症状の改善・軽減が見込めます。
また確定診断は、障害者手帳の取得や適切な障害福祉サービスを受けるために必要なプロセスの一つです。いきなり受診するのは不安かもしれませんが、自分の状態を正確に把握し、必要な支援につなげるためにも、気になる症状があるなら勇気を出して相談してみてください。
障害特性を理解する
障害特性への理解は、ADHDとの上手な付き合い方を見つけ、生きづらさを解消する自己対策のファーストステップです。まず、自分にできないことや苦手なことを知り、失敗やつまずきの原因を理解しましょう。さらに、好きなことや得意なことを明らかにし、自分の強みとして活かす方法を考えることで、自分にとって最適な進路や仕事が見えてきたり、自信を持って物事に取り組めるようになったりします。
自分では分からない一面を知るためにも、身近な人の意見を参考にする他己分析も取り入れながら、自己理解を深めるとよいでしょう。
必要な自己対策や配慮事項を明らかにする
ADHDの特性による困りごとの改善には、自己対策と、周囲の配慮・協力が不可欠です。障害理解や自己理解の結果を基に、必要な自己対策や配慮事項を明らかにしていくことが推奨されます。
例えば、忘れ物が多いなら、あらかじめ物の置き場所を決めておいたり、メモに残しておいたりするといった対策が有効です。時間やスケジュールの管理には、パソコンやスマートフォンのリマインダーやタイマー機能を活用するとよいでしょう。
また、段取りや優先順位をつけるのが難しいときは、やるべき内容に順番を振る、明確な期限と併せて指示を出してもらうなどの工夫や配慮が必要です。音や光などの刺激が気になる場合は、デスクの配置を変えるといった環境調整が求められます。
自分はもちろん、周囲にもADHDの特性を伝えて理解を深めたうえ、適切な合理的配慮を受けることで、より良い生活や就労が実現する可能性が高まります。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)を受ける
診断の結果、ADHDがあると分かった方で、日常生活や対人関係に悩みを抱えている場合は「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」を受けることをおすすめします。
SSTとは「認知行動療法」の一種であり、特性に応じたコミュニケーションスキルや自己管理能力などを身につけるトレーニングです。「社会生活技能訓練」とも呼ばれ、ほかの参加者と一緒に、ADHDの特性との上手な付き合い方をロールプレイング形式で実践的に学べるので、日常的な困りごとの改善が期待できます。
SSTは、医療機関や就労支援事業所、各種障害福祉施設などで受けられるので、まずは病院を受診、主治医に相談してみるとよいでしょう。
これまでの仕事や働き方を見直す
大人の発達障害という診断は、これまでの仕事や働き方を見直す転機になる可能性があります。仕事で適切な配慮やサポートを得るためには、周囲への障害開示が前提です。また「精神障害者保健福祉手帳」を取得できれば「障害者雇用枠」への応募が可能になり、業務配置や環境調整、通勤・勤務時間の調整といった個々の特性に応じた合理的配慮を受けながらはたらけるようになります。
障害者手帳を取得しない、もしくはできないとしても、障害を開示して理解を求め、特性に合わせて勤務形態や時間を見直すことで、就労上のストレスが減らせるかもしれません。通院・治療と両立しながら、より良くはたらけるようになる可能性が高まります。
悩みを気軽に相談できる相手を見つける
ADHDのある方は、些細な行き違いや刺激が大きな負担になるため、普通に生活や仕事をしているだけで、ストレスの多い毎日を送っていることがあります。また、大人の発達障害はデリケートな話題なので、誰にも相談できず、一人で抱え込んでいる方もいるでしょう。
心を健やかに保つために大切なのは、気持ちを言葉にして誰かに伝えることです。身近に相談できる相手がいないなら、障害者が集まるコミュニティサイトを利用してみてはいかがでしょうか。
インターネット上での交流なら、相手と実際に対面する必要がないため、どのようなことでも気軽に相談しやすいはずです。仲間とつながり、相談しあう中で、悩み解決のヒントが得られるかもしれません。また、自分の考えを言語化し、誰かに共有するだけでも、気持ちの整理や自己理解につながることがあります。
専門家には話しづらいような些細なことでも、同じ気持ちや悩みを理解してくれる相手がきっといるので、気軽に相談してみてください。
大人の発達障害・ADHDがある仲間が見つかる「あしたのあるきかた」

大人の発達障害は、日常生活や仕事、人間関係がうまくいかなくなることで気づくケースが大半です。困りごとの原因を突き止め、適切な治療や支援を受けるためにも、気になる症状があるときは大人の発達障害に対応する精神科や心療内科を受診してください。
いきなり病院を受診するのが不安な場合は、オンラインコミュニティで、同じような悩みを持つ仲間を探してみませんか。障害のある方のためのキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、誰にも相談できずに悩んでいる方や、一歩を踏み出す勇気が欲しいと思っている方を、たくさんの仲間が待っています。共につながり、励まし合い、学び合いながら、自分らしい未来について考えていきましょう。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員