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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

近年、発達障害がある方を支援するための法整備が進められています。その一つが「発達障害者支援法」です。
この記事では、発達障害者支援法について、主な目的や対象、改正の内容を踏まえ、具体的にどのような支援が受けられるのかをわかりやすくまとめました。
発達障害者支援法とは
「発達障害者支援法」とは、発達障害のある方への支援推進について規定する法律です。(出典:発達障害者支援法|e-Gov法令検索)。「障害者基本法」の基本理念に準じ、発達障害がある方を対象とする国内初の法律として、2004年に制定され、翌2005年に施行されました。
本来、発達障害は生まれつきのものです。早期に発見し、支援や療育を受ければ、特性に由来する困り事や生きづらさが軽減できるといわれています。しかし、発達障害の有無は見た目だけではわかりづらく、人それぞれ多様な特性があることから、発見が遅れるケースも少なくありません。
そこで各自治体において、障害があることで困っている方を早期に発見し、速やかに適切な支援へつなげることを主な目的として、発達障害者支援法が定められました。さらに、2016年には改正法が制定・施行され、より広範かつ一貫した支援の提供が目指されています。
発達障害者支援法の対象となる「発達障害」の定義
発達障害者支援法における「発達障害」とは、第2条の条文によると、主に「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠陥・多動症)」「LD(学習障害)」の3つの総称です。また「吃音症」や「トゥレット症候群」など、発達障害に類する脳機能障害も定義に含まれます。
条文上、発達障害は「低年齢時に発現するもの」と定義づけられていますが、支援対象に年齢制限はありません。乳幼児や児童、診断後に成年になった方はもちろん、大人になってから特性もしくはその傾向があると分かる、いわゆる「大人の発達障害」も支援対象です。
発達障害者支援法の改正について
発達障害者支援法は、2005年の施行後、2016年に改正されています。主な改正ポイントは以下の通りです。
- 社会的障壁の概念
- 家族を含む切れ目のない支援の提供
- 個々の障害特性に応じた個別の支援推進
- 雇用機会の確保と安定
改正発達障害者支援法では「障害により制限を受ける」という定義に加え、新たに「社会的障壁」という概念が追加されました。これは「発達障害のある方を含むすべての人の公平な社会参加を促すためには、制度や慣習、固定観念などの目に見えない差別をなくすことが必要だ」という考えに基づいています。
また、自治体単位で相互に連携し、対象に本人とその家族を含め、年齢にかかわらず、切れ目のない支援を提供することも義務づけられました。その一環として「発達障害者支援地域協議会」に関する規定が追加され、地域全体が協力して当事者を支援する試みとして、設置が進められています。
併せて、発達障害全般ではなく、一人ひとりの特性に配慮し、適切な支援を提供することが必要だと明記されたことも改正点の一つです。さらに、発達障害がある方の雇用機会を確保し、安定就労の実現を図るため、個々の特性に応じた雇用管理と、正当な評価の提供などに関する努力義務が新たに定められています。
発達障害者支援法における支援の内容
発達障害者支援法では、自治体や事業主、個人など各単位で障害への理解を促し、適切な支援を提供することが義務づけられています。これは「発達障害のある方は、その特性により、円滑な社会生活を妨げられることが多い」という基本理念によるものです。
支援の範囲は、保健・医療、福祉、教育、労働など多岐にわたり、個々の障害特性や年齢、生活の実態に応じて提供されます。その一つ、対象に大人の方を含む措置として設置されたのが「発達障害者支援センター」です。自治体によって名称が異なる場合もありますが、基本的には各都道府県・政令指定都市を主体として設置され、発達障害の早期発見・支援を主導する存在として位置づけられています。
発達障害者支援センターで受けられる主な支援内容は、当事者や家族からの相談受付と助言、地域の関係機関と連携した情報提供などです。生活や人との関わりの中で表面化しやすい特性との上手な付き合い方を学び、困り事を改善・軽減するための措置として講じられてます。
発達障害者支援法は当事者にどう役立っている?

ここでは、発達障害者支援法が実際に当事者の暮らしとどのように関わっているのかを見ていきましょう。
障害者雇用の促進
発達障害者支援法により、発達障害とその支援の必要性が明文化されたことで、生活や就労上のさまざまな課題の解決が目指されるようになりました。また、2018年に改正された「障害者雇用促進法」では、法定雇用率の算定方法の見直されました。企業・事業者に課せられる障害者雇用義務が、発達障害を含む精神障害者も対象になり、発達障害がある方の就労機会が以前より拡大しています。
よりポジティブな概念として、イノベーション創出を目的として経済産業省が推進する「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity:神経多様性)」の効果も期待されます。民間企業でも障害者雇用により積極的に取り組むようになったため、発達障害のある方の活躍の場が広がりつつあります。
就労支援サービスの充実
発達障害者支援法において、発達障害が精神障害に含まれる旨が明文化されたことで、発達障害のある方が受けられる就労支援サービスの幅が広がりました。ハローワークの障害者雇用窓口や障害者就業・生活支援センター、ジョブコーチなどによる支援に加え、就労支援事業所や障害者雇用に特化した転職・就職エージェントといった民間サービスも拡充しています。
こうした民間の就労支援サービスでは、個々の特性や希望に合う障害者雇用枠の求人紹介や応募書類の添削、面接対策などの個別支援が受けられるため、活用することで自分らしく安定してはたらける可能性が高まります。
悩みを相談できる場所の拡大
発達障害者支援法は、発達障害に対する話題や悩みをよりオープンにしやすくなったきっかけの一つです。オフライン・オンラインのコミュニティなど、発達障害のある方が集い、気軽に話したり、情報を共有し合ったりする場も増えました。
特に、近年のコミュニティサイトは種類が豊富で、悩みのカテゴリごとに細分化されているものもあり、同じような悩みや課題を持つ仲間を見つけやすくなっています。コミュニティやコミュニティサイトの多くは無料で登録・参加できるので、身近に相談できる相手がいない方は気軽に活用してみてはいかがでしょうか。
発達障害者の支援はどんどん広がっている

発達障害者支援法は、発達障害がある方の暮らしをより良くし、活躍の場を広げることに一役買っている法律です。今後、時代の流れや考え方の多様化に伴い、支援のさらなる拡充が期待されています。生活や仕事で困ったことがある方は、公的・民間の支援サービスを活用することで、解決の糸口がつかめるかもしれません。どのような支援が受けられるのか知りたい方は、まずはお住まいの地域の障害福祉窓口に相談してみるとよいでしょう。
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戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員