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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

「障害者雇用促進法」は、障害者の雇用促進と職業の安定を実現するための法律です。法定雇用率や合理的配慮など、障害のある方がはたらくために重要な制度が定められています。そのため、企業だけでなく障害者本人も、障害者雇用促進法について知っておくことが大切です。本記事では、障害者雇用促進法の意義や内容、障害者雇用で就労するために知っておきたいポイントについて解説します。
障害者雇用促進法とは
「障害者雇用促進法」は、障害者の雇用促進と職業の安定を図るための法律で、正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」です。障害の有無に関係なく、均等な機会や待遇の確保、障害者がスキルや経験を発揮できるようにすることが目的です。
障害者の雇用機会を拡大するために、従業員が一定数以上の企業には「障害者雇用率制度」によって、従業員に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にすることが義務化されています。
法定雇用率が定められている企業
厚生労働省の公式サイトによると、障害者雇用促進法における障害者雇用率制度は2026年2月現在、「従業員数40名以上」の企業が対象で民間企業の法定雇用率は2.5%です。つまり、従業員数40名以上の企業は、全従業員の2.5%を障害者とすることが義務付けられているということです。
ただし、2026年7月にはこれが改正され、従業員数37.5名以上の民間企業は2.7%以上の障害者を雇用することが義務となります。
障害者雇用促進法の対象者
障害者雇用促進法の対象となる「障害者」とは、次のいずれかの障害者手帳を取得している方を指します。
| 障害者手帳の種類 | 概要 | 対象となる障害・疾患の例 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体機能に一定以上の障害が ある人に交付される | 視覚障害 肢体不自由 心臓機能障害 |
| 療育手帳(愛の手帳) | 原則18歳未満で知的障害が ある人に交付される | 知的障害 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害の状態にある人に交 付される | 統合失調症 気分障害 発達障害 てんかん |
上記に挙げた障害・疾患はあくまで一例です。障害者手帳の交付対象となる条件は多岐にわたるため、詳細は厚生労働省の公式サイトや自治体の窓口をご確認ください。
指定難病のある方について
現行制度では「難病患者」については、疾患によって生活や就労に支障がある、もしくは身体機能に一定以上の永続的な障害が残っている場合のみ、障害者手帳を取得でき雇用促進法の障害者雇用率制度の対象となります。しかし、厚生労働省は障害者手帳を所持していない難病患者も、障害者雇用率の算定対象にすることを検討中です。
障害者実雇用率の算出方法
「障害者実雇用率」は、企業の従業員数に占める障害者の割合を示し、従業員数のカウントには次のような条件があります。
| 週30時間以上 | 1人 |
| 週20時間以上30時間未満 | 0.5人 |
| 週20時間未満 | 0人 |
ただし、障害者雇用数のカウント方法については、週30時間以上勤務の重度身体障害者や重度知的障害者は2人、精神障害者の短時間労働者(週20時間以上30時間未満)を1人とするなどの特例措置があります。
障害者雇用促進法で障害者が得られるメリット

障害者雇用促進法の存在や改正によって、障害のある方は就労に関して次のようなメリットが得られます。
就労できるチャンスが増える
障害者雇用促進法によって、障害のある方が就労できるチャンスが増えます。前述したように、法定雇用率は順次引き上げが続いているため、例えば2.5%から2.7%に改正されると、それだけ多くの障害者が就労しやすくなります。
特に大企業ほど雇用すべき障害者の人数が相対的に多くなるため、実は障害者雇用枠では大企業に就職・転職できるチャンスが得やすいのです。職場環境の最適化や定着率の向上、障害者が安心してはたらける機会の拡大などを目的として、「特例子会社」を設立する大企業も増えています。
合理的配慮を受けることができる
障害者雇用促進法や障害者差別解消法などにより、企業が障害者に「合理的配慮」を提供することが義務化されています。合理的配慮とは、障害のある方が職場で必要とするサポートを、企業が可能な範囲で提供することです。
例えば、身体障害がある方のためのバリアフリー環境や、精神障害のある方に適した時短勤務、在宅勤務などが該当します。事前に企業とすり合わせておくことで、自身の障害特性に合った合理的配慮を受けて、心身への負担を減らして安心してはたらきやすくなります。
障害者雇用で直面しやすい課題と解決策
障害者雇用促進法の制定により、障害のある方が就労できる機会は増えましたが、それでも次のような課題に直面することがあります。
スキルや経験を活かせないことがある
障害者雇用促進法により、一定数以上の規模の企業に障害者の雇用が義務付けられている反面、勤務時間や仕事内容などの配慮により「自分のスキルや経験を活かせる求人が少ない」というケースがあります。
障害者雇用では、障害のある方がはたらきやすい仕事内容や環境を整備するために、ルーチンワークや単純労働の比率が高いことが理由です。「キャリアアップしたいのに機会が得られない」などのミスマッチが生じると、早期離職につながってしまうため、就職・転職前に業務内容や人材育成などの方針について確認しておきましょう。
配慮事項を言語化しづらいことがある
自身にどのような障害特性があり、どんな配慮が必要かについては本人しか分かりません。そのため、具体的な配慮事項をご自身で明示できなければ、企業としても適切な対応ができず、「必要な配慮が受けられずはたらきにくい」という結果になりかねません。そのため、「どんなときに困難を感じるか」「どんな配慮があれば成果を出してはたらけるか」などを軸に、自己理解を深めて配慮事項を言語化することが大切です。
障害者雇用促進法を最大限に活用するために
障害のある方が、障害者雇用促進法を最大限に活用してご自身に合った仕事を探すためには、次のポイントを意識することが大切です。
障害特性に合った仕事を探すために自己分析を行う
障害者雇用枠での就労は、「安定して長期間はたらけること」が大前提であり、企業も安定就労できる人材を求めます。障害にはさまざまな種類がありますが、安定就労のために共通するポイントが「身体的・精神的ストレスを軽減してはたらける環境」を探すことです。
例えば、精神障害でコミュニケーションに強いストレスを感じるのであれば、対人業務の少ないデータ入力メインの事務職やIT系の職種を選ぶと良いでしょう。日々の生活の中で、自分で無意識のうちに対処していることもあるため、些細な工夫などにも注目してみてください。
必要に応じてスキルや資格を習得する
障害者雇用促進法により、障害者の雇用は拡大していますが、求人の種類はさまざまで、必ずしもスキルや経験を活かせるわけではありません。厚生労働省が2015年に公表した「平成25年度障害者雇用実態調査結果」によると、障害者雇用の離職理由として「賃金・労働条件に不満」や「仕事内容が合わない」が2~3割を占めています。
ご自身の希望の仕事内容や、キャリアアップや収入アップを目指すのであれば、一般雇用枠と同じくスキルや資格を習得することが重要です。
必要な配慮事項を分かりやすくまとめる
配慮事項については、「勤務体系」「業務内容」「環境整備」「コミュニケーション方法」「通院」などの観点からまとめましょう。「何ができないか」「どんな配慮があれば会社に貢献できるか」をまとめることで、「障害と向き合っている姿勢」も含めて企業にアピールできます。
ただし、ご自身の障害特性を把握できていない場合も多いです。その場合は、後述するキャリアアドバイザーやコミュニティなどの支援サービスを活用することで、自己理解を深めるためのヒントが得られます。
障害者雇用専門の転職エージェントを活用する
障害のある方がご自身に合った仕事を探すためには、プロのサポートを得るのがおすすめです。例えば、障害者雇用に特化した転職エージェント「dodaチャレンジ」では、さまざまな障害に関する専門知識や支援経験が豊富なキャリアアドバイザーが伴走し、適職を探すための支援が得られます。ご自身の障害特性や症状への理解を深め、どのような仕事・職場ではたらくのが向いているか、必要な配慮事項も含めて明確化できるでしょう。
障害者向けのコミュニティサイトで相談する
これから障害者雇用枠での就労を目指す方は、「まず何からやるべきか」分からず独りで悩みを抱えてしまっているケースが多いです。障害者雇用促進法で障害者の就労チャンスが増えているとはいえ、障害者雇用枠で理想の就労をかなえるためには知識や情報が欠かせません。「障害者向けのコミュニティサイト」を活用し、同じ境遇にある方に悩みを相談することで、転職活動に役立つ情報を得て、これからの働き方のヒントを得ることができます。
障害者雇用に関する疑問・悩みの相談は「あしたのあるきかた」で!

障害者雇用促進法により、障害のある方が合理的配慮を受けながら、安心して就労できるチャンスが増えました。しかし、障害特性や個々の特性はさまざまです。理想の働き方を実現するためには、自己理解を深めて適職を見極め、配慮事項を言語化する必要があります。そのために、悩みを相談できる「仲間」がいれば心強いでしょう。
障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、さまざまな障害のある方と交流できます。「どうすれば障害者雇用枠で就労できるか」、「どうしたら安定してはたらけるか」など、今後の就労のためのヒントが得られます。この機会にぜひ、ご自身の理想とする働き方ついて考える機会として、コミュニティを活用してみてください。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員